「犬も人も、いいところを見つけてもらえると嬉しい」ドッグトレーナーインタビューvol.01.  西岡裕記

「犬も人も、いいところを見つけてもらえると嬉しい」ドッグトレーナーインタビューvol.01. 西岡裕記

 

西岡裕記

三重県伊勢志摩出身。高校卒業後、動物について学ぶことを目的に上京。専門学校(青山ケンネルカレッジ)を卒業し、様々な警察犬訓練所やショップ・ブリーダーの元で勉強し、トレーナーとして経験を積んだ後、フリーのドッグトレーナーとして独立。出張・預かりのトレーニングを軸に、定期的にクラスを持ち、動物病院やトリミングサロンからの紹介で、その実力が口コミで広がっていく。犬服ブランドやCMの撮影コーディネートを行うなど、活動は多岐にわたる。

東京都動物愛護推進委員 第23022号

WEBサイト:http://www.dogworkszero.net



天性のセンスで犬と仲良くなれる父。
その憧れから、トレーナーの道へ。


生まれた時から、犬が当たり前のようにいる家庭で育ちました。スピッツ、ゴールデン、ラブラドール、ミックス犬に、猫もいて、家族みんなが、生き物が大好きでした。

家の中で、犬が人によって態度を変える様子をよく見てきました。うちの犬の場合、父親のいうことはなんでも聞くんですよね。とにかく、父親は犬の接し方が本当に上手な人でした。たまにいるんですよね、天性の才能で、その犬の一匹一匹の特徴を瞬時に理解して、感じたものをコミュニケーションに活かせるというか。生き物の本質的な部分を見るのが上手なんですよね。言葉にするのも難しいのですが、センスの一言に尽きます。

そんな父親の影響からか、高校卒業後の進路として、すでにドッグトレーナーの道を選んでいました。二十数年前の当時は、ドッグトレーナーの専門学校のコースが今ほどなく、唯一見つけた東京の専門学校に応募して、そこから今の仕事をしています。

西岡先生



トレーナーの仕事は、動物の気持ちを代弁してあげること。


専門学校卒業後にお世話になった警察訓練所の先輩から言われた一言は、今でも心に残っています。「トレーナーは、動物の気持ちを代弁してあげること」これが仕事だと。若い時は、その言葉を短絡的に捉え、犬の感情をそのままお客様に説明するような指導の仕方をしていました。でもそれは、「何故その問題が起こるのか」から、自分自身が目を背けてしまっていることだと気づきました。犬の感じていることをただ代弁するだけではなく、その感情が起こる背景も含めて、飼い主さんにわかりやすい言葉にして伝えるよう、今は努力しています。

実は、今日初めてトレーニングを受けるお客様のところに行きました。そのお客様のわんちゃんはやんちゃな性格で、人間が倒されるほどの力で暴れて大変だと飼い主さんは悩まれていました。お話を詳しく伺うと、一日中ほとんどゲージの中にいるそうなんですよね。ご主人が早く帰って来る時だけ散歩に行くけど、それ以外の日は行かないそうです。こんな時は、思わず犬の気持ちを代弁したくなりますよね(笑)

ドッグトレーナーという職業は、実は人間模様をたくさん知る仕事です。家庭に入って、家族構成や生活リズム、飼い主の習慣の全てを知らなければいけません。だからこそ、犬とコミュニケーションする技術だけではなく、人とのコミュニケーション能力を磨く必要のある仕事だと思っています。伝え方や表現力が必要です。動物が好きで、犬が好きで始めた仕事ではありますが、お客様に上手く伝えられないことがあると、これで良かったのかなと悩むことも多かったりします。



犬もひとも、いいところを見つけてもらえると嬉しい。


普段生活していて、何か問題が起こると、悪い所ばかり見てしまいがちですよね。わんちゃんに対しても、日常的に困ったところはありつつも、いいところを探すのが飼い主の仕事だと僕は思います。うまく愛情をかけられていると、トレーニングの上達も早いです。動物行動学やトレーニング学でも、最近の流れでもあるんですが、人も犬も悪いところや足りないところばかり指摘するのではなく、自分のやり方で良かったんだと思わせてあげることが大事です。

飼い主さんにも、自分の育て方やトレーニング方法が間違っているのではないかと不安に思われる方もいらっしゃいます。指摘され続けると、責められているように感じて嫌になっちゃいますよね。いいところに目を向けながら行動して結果がついてくると、犬も笑顔でこっちを見てくれるんですよね。そして、飼い主さんも喜んでいる。飼い主さん家族がみんなイキイキしている。犬たちのことを理解しようと、頑張ってくれる飼い主さんや前向きに考えて行動してくれる方に会えると、この仕事をやっていてよかったな、と思います。



トレーニングがうまくいくコツは、家族で取り組むこと。


家族みんなで協力して向き合うこと、これが何よりも大切です。メインで犬をお世話している人だけでは、やはり気力がもたない。夫婦やご家族でみんなで協力する意識や姿勢はとても重要です。奥様だけ、旦那様だけでトレーニング教室に来られる方もいらっしゃいますが、家族で取り組んでいただくほうが、うまく行く確率が上がります。しつけ教室に行くときは、是非、ご家族皆さんで足を運んでみてください。



イヌパシーを使って、何をすれば犬が喜ぶのか、探してほしい。


イヌパシーは5つの気持ちに反応して色が光りますよね。この目に見えて変化がわかることは、飼い主さんにとって大切だと思います。

僕は、自然が多いところで育ったのもあって、犬や生き物が自然のたくさんある場所で、おもいっきり遊ぶことが非常にプラスに働くと思っています。おもいっきり遊ばせることに対して、危ないんじゃないかな、怖がるんじゃないかな、と思う飼い主さんも多いです。でも、実際、犬自身は楽しんでいることもあります。愛犬との遊びに踏み出せずにいる人には、イヌパシーのハッピーを見ながら、何をすればもっと犬が喜ぶのかに注目しながら、楽しんでほしいなと思います。

トイプードルなど、小さなわんちゃんを飼っている方に比較的多いように感じていますが、ストレスをクローズアップして考えがちですね。とにかく、この子にとって何がハッピーなんだろう?だとか、どうしたら楽しんでくれるだろう?と考える時間をもっと増やしてあげてほしいです。

 

コロナでストレスを感じるのは、人も犬も一緒です。
散歩コースを変えてみたり、新しい刺激を作りましょう。

コロナ禍において、犬の行動異常の話をよく耳にします。多頭飼いのご家庭のわんちゃんが、今までものすごく仲が良かったのに、吠えて血が出るほど喧嘩するくらいストレスを感じていたり。新しい生活様式で、飼い主の慢性的なストレスが伝わっている可能性もありますね。

犬も飼い主もどこにも行けずテレワークが増えたことで、一緒にいる時間が増えて、逆にストレス行動を始めたという相談をたくさん受けています。ただ一緒にいるだけでは、犬は満足できません。散歩コースを変えようとか、リラックスできる一人の時間を作ってあげようだとか、イヌパシーを使って犬の気持ちに寄り添いながら、取り組んであげてほしいですね。

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